BIATC受講生の声

西村 亮祐
徳島大学大学院 医学研究科 博士後期課程
(受講時:東北大学 大学院生命科学研究科 博士前期課程2年)

 今からおよそ6年前、修士2年だった私は、培養上皮細胞の集団が作り出す3次元的な「形」に関する画像解析を行っていました。当時はどちらかというと生化学的手法がメインの研究室に所属していたため、画像定量解析に関する高度な専門知識をもつ人は周りにいませんでした。修論発表も迫ってくるなか、インターネット上に散らばる断片的な情報に頼って独力で解析を進めることに限界を感じていました。そのような時、研究棟の廊下に貼り出されていた「生物画像解析トレーニングコース」のポスターを偶然目にし、わらにもすがるような思いで申込みをしました。

 受講当時、すでにImageJの操作自体はある程度習熟していたものの、座学でそもそもデジタル画像とは何か、画像処理がどのような原理に基づいて行われているのかについて学んだのちに、実際に手を動かして体感しながら学ぶことができた時には目からうろこが落ちる思いでした。独学ではどうしても「すでに出たデータを後からなんとかする」「自分が使うところだけ最小限学ぶ」ということになりがちですが、本コースでImageJが備えている基本的機能や、画像解析に適した画像取得の方法について一通り幅広く学んだことで、解析以前の実験デザインの段階で「何をはかりたいのか、どうすれば効率良くはかれるのか」を具体的に意識することができるようになりました。

 さらにこのコースの大きな特長は、受講者が単に受け身で講義・実習を受けるだけでなく、自らが抱える画像解析上の課題を講師・受講者全員で共有し、共に解決策を考えるという点にあります。私も当時解析に困難を感じていた画像データを持ち込み、解決の糸口を見つけることができました。その後、世話人代表である加藤輝先生との共同研究がスタートし、論文の出版に至りました[1]。加藤先生とのご縁は博士課程進学に伴う研究室の異動後も続き、上皮細胞集団が変形する際の細胞核のトラッキング(追跡)解析にお力添えを頂き(下図)、2報目の論文の出版に至りました[2]。この論文を基に学位を取得し、来月からは同コースを運営するバイオイメージング解析室にて研究を続けます。2泊3日に渡ってみっちり行われたコースは非常にハードなものでしたが、そこで学んだことは現在に至るまで私の血肉となっています。画像解析を「なんとかしたい」とお考えの方はぜひ勇気を出して一歩踏み出してみてください。

図:細胞核(ヒストン2B)をGFP標識し、浮遊培養下で上皮細胞の集団が細長い形から球状に変形していく際の個々の細胞の動きをトラッキング(追跡)しました。さらに近接する2細胞の動きの相関(細胞間をつなぐ線分の色で表示)を計算することで、細胞の配置換えと細胞集団の形状変化の関連を検討しました。(スケールバー:50 um、フレーム間隔:10 s)(解析ご協力:加藤輝特任助教)
参考文献
  1. Nishimura et al. (2018) Cell Structure and Function, doi:10.1247/csf.18010
  2. Nishimura et al. (2022) Cell Structure and Function, doi:10.1247/csf.22014

追加資料

2016年の開催記録資料:基礎生物学研究所HP内

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